Trumpet — Lip Slurs
リップスラーは高音域・スタミナ・音色のすべてに効く、トランペットの中核的な基礎練習です。「唇のスラー」という名前に引きずられて唇だけを動かそうとすると、かえって繋がりません。舌と息の連動という観点から、繋がらない原因を分解します。
リップスラーは、運指を変えずに倍音だけを移動する練習です。同じ指のまま音が変わるので、指に頼れません。息の速度とアンブシュア内部の状態だけで音程を動かす必要があり、これがトランペットの柔軟性の中核になります。
「リップスラーができない」の中身は、症状によって対処が全く違います。自分の症状を特定してください。
倍音の切り替わりで音が一瞬消えるタイプ。息が止まっているのが原因です。まず同じ音のロングトーンで息が最後まで流れ続けることを確認し、その息の上で倍音を動かします。テンポを大幅に落として、切れ目がなくなる速さから始めてください。
下の倍音から上に上がれないタイプ。息の速度が変化していないのが原因です。「シラブル」を使って、低い側で オー、高い側で イー と発音するときの舌の形を意識すると、口腔内の変化が起きやすくなります。
目的の倍音を通り越して途中の音が挟まるタイプ。移動が緩慢なのが原因です。舌の位置を「連続的に滑らせる」のではなく、目的の形に「切り替える」意識に変えます。
数回で唇が動かなくなるタイプ。マウスピースの圧力が強すぎます。楽器を持つ手の力を意識的に緩め、押し付けずに出せる音量まで下げて練習してください。
ITG の基礎練習の考え方に沿って、必ずメトロノームを併用します。速さは結果であって目的ではありません。
リップスラーは効果が見えにくい練習です。以下の変化が出ていれば、正しい方向に進んでいます。
リップスラーの練習でつまずきやすいポイントをまとめました。
はい。柔軟性は落ちやすいので、短時間でも毎日行うのが効果的です。目安は5〜10分。長時間まとめて行うより、日課の中に必ず入れることを優先してください。ITGの資料でも、ロングトーン・リップスラー・タンギング・スケールを日課として回す考え方が標準的に示されています。
合っています。リップスラーで大きく動いているのは主に舌の位置と息の速度で、唇そのものを積極的に動かす練習ではありません。「唇のスラー」という名前から唇を締めたり緩めたりしようとすると、かえって振動が阻害されて繋がらなくなります。
目標テンポを決めるより、「滑らかに繋がる範囲で少しずつ上げる」運用にしてください。速さは結果であって目的ではありません。繋がらないテンポで反復すると、音が途切れる形のほうが定着してしまいます。メトロノームを必ず併用し、崩れたら1目盛戻すことを徹底してください。
柔軟性と音作りの分野では、James Stamp、Cichowicz、Schlossberg 系の教材が音大レベルの日課構築の中心として広く挙げられます。中高生の段階であれば、まず学校にある基礎教本のリップスラーの項目をメトロノーム付きで丁寧に回すだけでも十分な効果があります。
リップスラーを含む柔軟性の練習は、以下のPDF教材にも譜例つきで収録しています。
バジング・ロングトーン・リップスラー・タンギングを含む日課の全体設計と、中学〜音大のレベル別PDF教材はこちらにまとめています。