Flute — Vibrato
ビブラートは「上手に聞こえるための飾り」ではなく、意図してコントロールする表現手段です。かける前に満たすべき条件と、速さ・幅を自分で選べるようになるまでの手順を解説します。
ビブラートの練習を始める前に、確認しておくべきことが2つあります。順序を飛ばすと、不安定な音を揺らしてごまかす習慣がついてしまいます。
ビブラートの習得で最も重要なのは、自分で波の数を決められることです。メトロノームを使って、機械的に数を数える段階を必ず通ってください。
ビブラートは常に同じ速さ・同じ幅でかけるものではありません。国立音楽大学でのデニス・ブリアコフの公開レッスンでは、モーツァルト作品に対して「当時の木製フルートを想起させる音」「クリアすぎない高音」といった様式感が指導され、ジョルジュ・ユー《ファンタジー》では「正確さだけではシンプルすぎる」「表現をもっと変化させ自由に」と助言されています。正確さの上に、変化を計画的に設計するという発想が要点です。
フレーズの入口では控えめに、頂点に向けて幅と速さを増やす。終わりに向けて落ち着かせる。一定のビブラートをかけ続けるより、線の方向が伝わります。
古典派の作品と近現代の作品では、適切なビブラートの量が異なります。作品の様式を調べたうえで選ぶ、という順序を習慣にしてください。
吹奏楽の中で全員が思い思いのビブラートをかけると、和音が濁ります。ソロなのか、和音の一部なのかで判断を変えてください。
ノンビブラートも表現の一つです。かけないことを選べる状態が、コントロールできている状態です。
ビブラートの習得についてよく寄せられる質問をまとめました。
年数ではなく、ノンビブラートで音程と音色が安定しているかで判断してください。まっすぐな音が安定していない段階でかけ始めると、音程の不安定さが揺れに紛れて自分で気づけなくなります。ロングトーンで音の立ち上がりから終わりまで音程が動かない状態を先に作るのが順序です。
止められるかどうかで判断できます。意図してノンビブラートに戻せるなら、それはコントロールできている状態です。止められないなら、それは「かけている」のではなく「揺れてしまっている」状態で、息の支えが不安定なことが原因である場合が多いです。
一律の正解はなく、様式と文脈で決まります。古典派と近現代では適切な量が違いますし、吹奏楽の和音の一部を担当している場面では、控えるほうが合う場合もあります。まず「かける・かけない」を自分で選べる状態を作り、そのうえで作品ごとに判断してください。
顎や頭が動いて唄口との角度が変わっている可能性が高いです。鏡の前で吹いて、頭が上下していないか確認してください。また、ビブラートは音程の中心を保ったまま上下に揺れるものです。ドローン音を鳴らしながら練習すると、中心がずれていないか耳で確認できます。
音作りとビブラートに関わる練習は、以下のPDF教材にも収録しています。
モイーズ《ソノリテ》・タファネル=ゴーベールを軸にした練習の三本柱と、中学〜音大のレベル別PDF教材はこちらにまとめています。